NCデータ最適化の方法


[最適化について]
 NCデータの最適化は、TRYCUTがシミュレーション中 工具の移動ピッチごとに把握している切削除去量や 切削ポイント(アップカット/ダウンカットなど)の情報を利用し、最適な送り速度や 逃げ動作への変換をNCデータにフィードバックしようとするものです。 従来からTRYCUT(初版以来)ではこれらの情報を元に擬似切削音を出力させて いたのですが、せっかくの情報だからもう少し有効利用させてみては? といったとこ ろから始まった試みです。
 本機能は切削効率を向上させることがねらいで、最終的にはDNC直結という夢?の ような展望もあります。現時点では、操作体系は確立していません。 またもっともっと信頼性の向上利用技術の蓄積が 必要かと思っています。そのためにも処理中の内部情報データ( 切削モニタリングデータ)も公開し、ユーザー様からのご指摘 もいただきながら継続的に改善を進めて行きたいと思います。
 なお本機能についての補足説明は、 ホームページの最適化ページでも追記してゆきますので合わせてご参照 下さい。


[最適化の操作]
 まずは工具設定ファイル内で工具ごとに最適化送り速度 を設定しておきます。実際の実行は、ポップ・アップ・メニューの「加工(R)」 の「加工&最適化NC出力(O)」を選択し、「実行」で処理が行われます。  処理後の被切削材は「加工して結果表示(T)」機能を使用するのと同様、切削 された形状が残ります。

※最適化されたNCデータを実際の加工で使用される場合は、念のため「C」キーで 被切削材を元に戻し、最適化後のNCデータを選択し、干渉チェックモードを有効に して加工シミュレーションを行うなど十分な検証を行っておいて下さい。

「切削部」
 G00〜G03など、全ての移動指令部に対して、切削している部分に対する 変換方法を選択します。
選択項目説   明
そのまま 送り速度は変換しません。ただし例外として 早送り干渉チェックを行わないモードで、かつG00で切削している場合はG01に変換し、 送り速度は50固定もしくはOPT-F設定されている場合にはその最低値をF値とします。
送り速度(F値)を最適化 工具設定ファイルで工具ごとに指定する 最適化送り速度に変換します。また 早送り干渉チェックを行わないモードで、かつG00で切削している場合は 、G01に変換し送り速度も最適化されたものが指定されます。
逃げ動作に変換
(特殊用途)
(新設)
通常の最適化の逆で、切削部を逃げ動作に変換します。特殊な用途でのみ利用するもので、 通常は加工では使えず干渉が発生してしまいます。逃げ動作の 仕様は、以下の「空転部」の「逃げ動作に変換」と同様です。
注)この設定を行っている時に同時に空転部も逃げ動作に変換すると経路は無くなります。

「空転部」
 G01〜G03のように切削送り指定されている部分で、空転している 部分の変換方法を選択します。最適化処理中の空転部の判断は、他の加工処理とは 異なり、安全サイドになるように、早送り部、切削送り部の区別なく強制的に 初期設定ファイル(TRYCUT.INI)の "TOOL CLEARANCE"指定のYES相当の処理を行います。
選択項目説   明
そのまま 元のF値が指定されたまま、空転切削します。
逃げ動作に変換 早送り移動領域(※早送り動作の仕様として各軸が非同期で軌跡の詳細仕様が 不明である前提、つまり安全サイドで計算)の最高点より3mm高い位置まで逃げ 動作し、次ぎの切削点の手前 から最適化最低速(OPT-F/f1)で下降します。ただしX軸もY軸も初期設定ファイルで 指定されるESCAPE-WIDTH(省略時は、工具移動ピッチの3倍)より小さな移動の 場合は、逃げ動作は行わず「そのまま」の処理が適用されます。
最適化最高速で 工具設定ファイルで工具ごとに指定する 最適化送り速度の全面部(OPT-F(A))最高速に変換し、空転切削します。 最適化送り速度が定義されていない場合は、マシン最高速が指定されます。
マシン最高速で 機械定義ファイルで指定するマシンの もつ最高送り速度(MAXIMUM FEEDRATE)に変換し、空転切削します。

「回避高さ」
 最適化中、逃げ動作を行った場合のワークからの回避高さ。 初期設定ファイルにて指定する"ESCAPE-HEIGHT"と 同じもの。
重要:回避動作は最高点でG00による水平動作を行います。 この時のワークとの干渉チェックは、不確定なG00動作で考えられる全ての経路に おいて、干渉回避して高さを決定しています。


「切削モニタリングデータ」
 まず出力される切削モニタリングデータのネーミングモードを指定します。 「自動ネーミング」にチェックを入れた場合、 名称は、"元経路ファイル名.拡張子" (拡張子は、初期設定ファイルにて指定)として作成されます。またチェックを入れていない場合は、 "CUTDATA.TXT"(テキスト形式)又は"CUTDATA.BIN"(バイナリ形式)として固定名称で 作成されます。
 切削中の状況をモニタリングしたデータファイルの出力モードを選択します。 本データはNCデータを最適化するための各種情報を、工具の移動ピッチ(かなり 大きなデータになります)ごとに記述したものをNCデータ形式に近い形で出力 します。本データを解析して グラフ表示するソフトも 別のモジュールで公開しています。
 切削モニタリングデータは、最適化データの検証や、将来的に別モジュールによる最適化 処理(カスタマイズ)を可能にすることをねらいにしたものです。
選択項目説   明
出力しない 出力しません。
出力する テキスト形式の切削モニタリングデータ(初期設定ファイルにて格納フォルダを指定可能 省略時は作業フォルダ)が 出力されます。
出力して開く テキスト形式の切削モニタリングデータが出力され、 同時に、初期設定ファイル[ExecEditor]セクションのEXEC_MON_EDITORで指定されて いる編集エディターで開かれます。
バイナリ出力 バイナリ形式の切削モニタリングデータが出力される。編集エディターでは 開かれません。"テキスト形式のサイズの1/8〜1/10に圧縮 されて出力される。中身は テキスト形式のものと等価なデータ構造を持ちます。このモードは切削モニタ リングデータ解析処理を開発されるユーザー様向けです。 本バイナリ形式を読まれるユーザー様で、中身のフォーマット説明や読み取り処理の サンプルプログラム( CUTDATA.BIN → CUTDATA.TXT 変換)が必要な場合 は、 こちら をご参照下さい。
バイナリ出力して開く バイナリ形式の切削モニタリングデータが出力され、 同時に、初期設定ファイル[ExecEditor]セクションのEXEC_MON_EDITORで指定されて いる編集エディターで開かれます。本設定の場合には、TrMonitorなどの 専用ビューワが指定されていることを想定したものです。

 各行は以下の順でデータが並んでいます。
(1)元NCデータのひとつの移動ブロックの番号をブロックごとの連番で(N コード)
(2)ひとつの移動ブロック内での移動点番号(カッコ内)
(3)元NCデータの移動コード(G00 or G01 or G02 or G03 各種補正やサイクルコードは展開済みのもの、例外としてG06.2やG132は、"NURBS"と表示)
(4)移動点座標(X,Y,Z コード)
(5)元の送り速度(Fコード)
(6)切削状況(カッコ内 N:空転 A:全面切削 V:垂直切削 U:アップカット D:ダウンカット)
※全面切削とは、垂直切削以外で、工具のアップカット側、ダウンカット側の 一部でも双方で切削している場合に指す。
(7)単位移動(1mm)あたりの切削除去量(カッコ内)
注:この量は実際は変化のない部分でも、被切削材(格子)の 精度と工具の移動ピッチとの関係や切削方向によって大きくバラツク場合も あります。
(8)最適化ルールに従った送り速度、ただし進入時の減速は行われていません (カッコ内 Fコード)
例: N39(0007)G01X43.000000Y0.000000Z35.000000F1000(A37.963111F100)
 なお工具指定のためのTコードやG92の位置決め指定なども別途ブロックで 出力されます。

「最適化NCデータ」
 まず出力される最適化NCデータのネーミングモードを指定します。 「自動ネーミング」にチェックを入れた場合、 名称は、"元経路ファイル名.拡張子" (拡張子は、初期設定ファイルにて指定)として作成されます。またチェックを入れていない場合は、"OPTNC.NC"として固定名称で 作成されます。
 最適化NCデータの出力モードを選択します。
選択項目説   明
出力しない 出力しません。
出力する 最適化後のNCデータ(初期設定ファイル にて格納フォルダを指定可能 省略時は作業フォルダ)が出力されます。
出力して開く 最適化後のNCデータが出力され、 同時に、初期設定ファイルで指定されて いる編集エディターで開かれます。

<最適化NCデータの仕様>
 最適化後に出力されるNCコードは、最適化前のNCデータを元に新規に 作成されます。作成基準は以下の仕様に従います。

  • 制御(ワーク)座標系で出力されます。
  • 工具長補正、工具径補正は展開され、補正された位置で出力されます。実質的 にはこれらの補正コードが存在しているNCデータには適用困難です。
  • サイクルコードG73/G74/G76/G80〜G89は展開されます。
  • 座標値は元NCデータに関せず、絶対値(ABS)で出力されます。
  • 最小設定単位は、コントローラー定義ファイルの UNITの定義に従います。
  • 小数点は、コントローラー定義ファイルの DECIMAL POINTで、YESとNORMALのときは小数点 あり、AUTOとNOのときは小数点無しで出力されます。
  • 出力されるGコードはG00,G01,G02,G03,G17,G18,G19,G92
  • G02、G03は、IJK指定
  • Fコードは直接指令で指定されます。
  • Tコード、Mコード、Sコードは元データから抽出して出力。
  • 基本的にNURBS補間(G06.2,G132)コードに対する最適化は行われて いませんが、万一これらのコードが挿入されていた場合は、曲線を移動ピッチで 分割してG01ブロック群に変換したという想定で処理されます。(変則的ですが、 、NURBS補間部分の座標値列のチェックにも使えるかもしれません。)


    目次へ